2012年02月28日

映画に観る憲法

映画にみる憲法の精神  第12回
 『いのちの山河 〜日本の青空U〜 』 
(2009年/日本/120分/監督:大澤豊)

 年間200本ほど映画を観ますが、涙が頬を伝う映画に出会うのは年に数本です。この
映画もそのうちの一本でした。主人公の崇高な精神と生き様に。
 岩手県の山間に位置する小さな村・沢内村では、長年、豪雪・多病・貧困という大きな
問題を抱えていた。そんなある日、長く無医村であったこの地で、父・晟訓(加藤剛)か
ら医者になることを期待されながらも村を離れていた深澤晟雄(長谷川初範)が妻のミキ
(とよた真帆)と共に帰郷する。昔と変わらない悲惨な村の状況を目にした晟雄は、何と
か村をよくしたいという気持ちが湧き上がり、自らの信念である“生命尊重”の在り方を
説き、沢内村村長となった。いよいよ村民の医療無料化に踏み切ろうと決意するが、国民
健康保険法違反という壁に突き当たってしまう。だが、晟雄は村民の生命を守るため、全
国に先駆けて何としてでも実現させようと、国民の生存権を規定した憲法25条の精神を
盾に推し進めていく。こうして“生命行政”に徹した深澤村政は、全国の自治体で初めて
60歳以上の村民と乳児の医療費を無料化、全国でも最悪の乳児死亡率だった村が、全国
初の乳児死亡ゼロという偉業を達成するまでになるのだった……。(HPより)
 ここでは日本国憲法第8章の「地方自治」を考えてみたい。日本国憲法第92条には、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」と定められており、それに基づき、「地方自治の本旨に基いて、(中略)地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする」とする地方自治法が定められています。
 つまり、戦前の中央集権的な国家の反省から、外交などを除いて地方のことは地方が決める仕組みを憲法として保障したわけです。それも民主的に行われることを。
 しかし残念ながら、憲法上の地方自治の原則にもかかわらず、国(中央政府)には中央統制の戦前以来の伝統が強く残っていて、その権限と権限の基盤となる金(財源)を握り締め、地方公共団体(自治体)に委譲しようとしていません。3割自治と言われている問題です。そのため、ほとんどの地方自治体は、国が負担する国庫支出金(補助金)などに依存しているのが現状です。これは、地方行政が国の政策に大きな影響を受けることを意味しています。国民健康保険も学校教育も生活保護も、本来は国が国民に保障したものですから、国が財源の手当をすべきですが、実際は地方の財源を圧迫しています。
 深澤村長は、医療費の無料化をめざし、国民健康保険法という国家政策の壁に突き当っ
た時に、憲法25条を拠り所にしました。憲法が最高法規としての役割を発揮したわけで
す。 「憲法を暮らしにいかそう」―――かつて埼玉県庁に垂れ幕がかかっていました。
posted by わたりどり at 17:13| つぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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